モノクロ24

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知らせの中で宛てられた「可哀想」なんて文字が
心底煩わしく厭わしかったから無視していたけれど
Amazonであの映画を見つけたのが気まぐれの起こり


イヤホンの音楽がリピートし始めた頃に降りた駅から
乗ったバスを途中下車して、タクシーが走り出すと
やがて街灯が少なくなって寂れた商店街の先、
すっかり暗くなった所に建物が見えた。

面会時間はとっくに越えていたから人気の無いロビーを過ぎて
部屋の一番窓際、辺りの視線に一礼しながら近づくと
微動だに動かず聞き取れないくらいの寝息で
数年の経過をうつす表情を一瞥したら看護婦さんに
あの映画とDVDプレーヤーを渡して踵を返し
非常灯とわずかな照明だけのロビーを戻って
外は電話番号を浮かばせる光だけがぼんやり明るく、
ものの数分でタクシーはやって来た。

「この辺はほとんど流さないから」
来た時と同じ声の運転手はしばらく待っていてくれたようで
過疎化を嘆く様子でもない世間話は駅までの随分な距離で
淡々と続いてしばらくしてようやく繁華街の明かり、
人がまばらな駅で乗った電車の中で思い返しても
やっぱり郷愁も懐古も無かった。


取り残された商店街で響いたシャッターの音は乾いて
錆だらけでもう開くことは無いんだろうね。